何かをデザインしようとしたとき、その対象そのものだけでなく、その対象をとりまく時間軸まで含めてデザインしようとする動きが、ここ数年の流れの一つになっている。
「エクスペリエンス・デザイン Experience Design」と呼ばれるデザインの考え方は、この時間軸をデザインしようというムーブメントである、と言えるかもしれない。
例えば、コンシューマ向け商品の場合、そのエクスペリエンス・デザインを考えると、その商品の外観デザインだけでなく、以下のポイントをデザインしていくことになるだろう。
- その商品を、コンシューマにどのように知らせるかをデザインする
- その商品のパッケージの外観、開け方、開けてから製品を手に取るまでの過程をデザインする
- (電気製品の場合)電源の入れ方、入れてから使用状態に至る過程、電源のオフの仕方をデザインする
- 長期間使用していく過程での変化をデザインする
- 故障してから、修理、再使用の過程をデザインする
このような視点で、「ユーザーにとっての経験」をデザインしていくと、様々な「過程」を意識することになる。過程とは、ユーザーとその商品が共に過ごす時間だととらえると、イメージしやすいかもしれない。
時間軸として、長期の時間軸と短期の時間軸の両方を意識すると、デザインすべき過程を、整理しやすいと思う。
長期の時間軸を意識する例としては、長い期間使用するときに感じる製品の「雰囲気」や、故障や不具合に至ったときのサポート体制やリカバリー機能などがあるだろう。
一方で、短期の時間軸の例としては、使用するその時々で、ユーザーによる操作などの「接点」での製品の「動き・反応」が、重要なポイントとなるだろう。
商品を知ったときに驚きを感じ、購入したときに喜びを感じ、使い続けるにつれ満足感が高まり、故障したときのガッカリ感が、サポート・リカバリーによって感謝・信頼の気持に変わる。
エクスペリエンス・デザインとは、このような視点でのデザインかもしれない。