2012年10月14日日曜日

音楽を楽しむ装置

レコードとFMラジオ放送。

1980年代前半に中学・高校時代を過ごした世代の私にとって、これらが音楽ソースの中心だった。CDが世の中に登場したのは1982年だが、プレーヤーが高価で手が出ず、手に入れたのは80年代後半になってからのことだ。

LPレコード、いわゆる「アルバム」は、80年代当時2,500円〜3,000円くらいの値段だったと思う。中学生には値の張る買い物だが、こづかいをやりくりしてお気に入りの1枚を買っていたものだ。また、そのころレンタルレコード店が流行りだし、200円〜300円で借りることができるようになり、せっせとカセットテープに録音していたことを思い出す。

レコードと並んで、当時のFM放送も貴重な音楽ソースだった。現在のFM放送はトーク番組が多くなったようだが、当時は「音楽を録音するための番組」が主流だったように思う。録音しやすいように、曲の始めと終わりには、DJのトークがかぶらないように配慮されていた。

「ウォークマン」で再生していたカセットテープには、このようにして録音したFM放送やレンタルレコードの音楽が詰まっていた。

現在では、その装置がiPhone(iPod)になり、カセットテープの時代と比べれば、音質はよくなり使い勝手も飛躍的に便利になったと思う。私が今使っているiPhoneには6,000曲以上入っていて、手元にある音楽ソースをすべて持ち運んでいることになる。

すごいことがあたりまえになったと思う一方で、音質も悪く不便だった時代は、当時は当時でかなり楽しい時代であったように思う。不便であれば、それをなんとか克服しようと、あれこれ工夫することが当たり前だった。「今日持って行くカセットはどれにするか」、「このレコードを録音するテープは60分がいいか46分がいいか?それとも90分テープのA面にすべて収まるか?収まったとしたらB面には何を入れるか?」、「ドルビー(雑音を低減する機能)をオンにするか、それともドルビー機能がないテープデッキで使うことを想定してオフにしておくか」など、マニアックな領域のことも含めて常に考えていた。このような工夫の過程で、様々な知識を吸収することができ、それがまた新たな工夫を生んだ。

今の時代、6,000曲がいつも手元にあると思うと、便利だと思う反面、音楽の楽しみ方についてあまり考えなくなったという実感もある。楽しみというものには、多少の不便さが同居しているものなのかもしれない。

自宅での音楽の楽しみ方も変わった。今ではiPhoneに入っている曲をApple TVを経由してAVアンプにつなぎ、スピーカーを鳴らしている。音楽を楽しむ装置は飛躍的に進歩したと同時に、いまは過渡期でもあるようだ。