2007年3月16日金曜日

技術を顧客価値につなげる

先日、大手総合電機メーカーのデザイン部門に招かれ、「イノベーティブワークウェイの実現に向けて」と題して、講演させていただきました。30名ほどのデザイナーのみなさんや、デザイン部門の部門長さまにもご参加いただき、2時間ちょうどの予定が、30分オーバーするほど、質疑応答がもりあがりました。

講演の内容は、昨年コラボレーションしたIDEO社の事例として、イノベーティブなワークスペースのあり方と、イノベーションプロセスの実践論をお話し、その後、デザイナーがHUBとなるイノベーションプロセスの実践と、その組織展開について、お話とディスカッションを行いました。

講演の中で、「イノベーション」という言葉を、どう捉えるかという問題提起をし、「イノベーションとは、技術を生み出すことではなく、生み出された技術を顧客価値につなげることではないか」という考え方を述べました。講演後に部門長さまと会食した際に、「そのイノベーションの定義は、まさにそうだと思う」と共感していただくことができました。

さて、技術を顧客価値につなげるには、どうしたらいいのでしょうか。イノベーションを起そうとするときに、常に問われる課題だと思います。それを解く一つのカギは、技術を知っている人と、顧客・市場を知っている人の存在と、その両者をつなぐ人、この3者の存在が、少なくとも必要なのではないか、と考えています。技術を知っている人は、研究所や開発部門にいるはずです。顧客・市場を知っている人は、マーケティング部門や営業部門にいるでしょう。その両者のつなぐ人は、どこにいるのでしょうか?

その役目として適任なのが、デザイン思考ができる人なのではないか、と考えています。デザイン思考ができる人とは、ユーザ基点での価値創造を行うプロセスを実践している人、と言うことができるかもしれません。

マーケティングの専門家とのコラボレーションで、ユーザのニーズを捉え、技術の専門家と一緒に、ニーズを満たす(あるいは超える)形にしていく。イノベーションを起すために、そのような役割が、ますます重要になってくるのではないか、と考えています。

2007年3月6日火曜日

余白をデザインする

「余白」という言葉に、みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
「余分な空白」とか、「余白を埋めよ」という試験問題文を
思い浮かべたりするかもしれませんね。

「余白」という言葉は、辞書によると、
「文字などを書いてある紙面で、何も記されないで白いままで残っている部分。空白。」
という意味のようです。
特に難しい意味はないようですが、「余白」に対する認識は、
人それぞれかもしれません。
余白を、「埋めるもの、残したくないもの」と捉えるか、
「そこに必要な余白について考える」かで、
デザインのアプローチが大きく変わってくると思います。

余白について考えるとき、わかりやすい例として、
古い広告をご紹介したいと思います。
60年代のフォルクスワーゲン・ビートルの新聞広告です。
巨大なクルマが当たり前だったアメリカで、
"Think small"というメッセージを投げかけています。
ビートルの小ささが、余白の大きさとの対比で、強力に表現されている広告です。

必要な余白を認識し、それを残すセンスを持ちたいと思っています。
詰め込むことによって、逆に失われてしまうものがあること、
余分でない余白、意味をもつ余白を意識していたいと思います。